図書館員の本棚 Comments

本棚に並べている図書館員のコメントとともにご紹介します。
書名をクリックすると、本の詳しい情報を見ることができます。

図書館員Nの本棚

どろぼうがないた
杉川としひろ/作 ふくだじゅんこ/絵
冨山房インターナショナル
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 町からすこしはなれたおかの上に たったひとりですんでいたどろぼう。さびしくもない、かなしくもない、ないたこともない。
 ある日ぬすんだはこの中に入っていたのは 土の入った小さなはちだけ。がっかりしてねむったが・・・あさ、そのはちからめがでていた。つぎの日も、そのつぎの日ものびていくめ。はなしかけ、水をやりめをそだてることがたのしくなった。いままでぬすんだものはかえして、はたけでやさいを育て、食べきれない分を売ったお金で えのぐやふでやキャンバスを買った。めがおおきなつぼみをつけたので、花がさいたら「えをかいてやろう」と。
 そこに なんどもひびくせんそうの音。おかににげかえったどろぼうが目にしたのは、はたけのすみにたおれていたまっ白な花だった。どろぼうはおおごえでないた。
 奥付からもう一度表紙に目をもどしてください。そこには・・・。

図書館員Sの本棚

がんばれ!児童図書館員
杉山きく子/著
本作り空Sola
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子どもの頃に読んだ本(読んでもらった本)で忘れられない本はありますか?
 記憶はあいまいでも、「挿絵を憶えている」とか「物語の中においしそうなお菓子がでてきた」とか印象的な場面だけ憶えていることも多いみたいですね。
 長年、図書館で児童サービスに携わってきた作者が語るエピソードにほっこりしたり、涙したり、知識や技術について書かれているのかな?と勉強気分で読み始めたらどんどん引き込まれて、けっこう分厚い本をあっという間に読んでしまいました。
 児童サービスのなんて奥深いこと!児童書のなんて魅力的なこと!
 本を愛するすべての人に・・・・実用書としても優秀です。

図書館員Oの本棚

紛争地の看護師
白川優子/著
小学館
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 1973年、埼玉県出身の著者は日本とオーストラリアで看護師の経験を積む。
 2010年に「国境なき医師団」に初参加、紛争地を中心とした派遣に応じてきた。
 イスラム国が台頭するイラクやシリア、15万人が難民となった南スーダン、内戦が続くイエメン、パレスチナ、イスラエルでの過酷な医療活動を綴っている。
 この空爆をやめてほしい。武器の生産をやめてほしい。誰に言えば伝わる?
 どこに発信すれば届く?何回言えばよいのだ?
 国、国籍、人種を超えた、同じ人間としての思いで活動を続ける著者の叫びが心に刺さる。
 大国同士の対立が激しくなる今、平和とは何かを考えながら読んでほしい。

図書館員Yの本棚

シンプルだから、贅沢
ドミニック・ローホー/著 原秋子/訳
講談社
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私たちの毎日の生活の中で何か一つに決めなければいけない時に
選択肢の多さに驚きませんか?
 この本はフランス人の著者が私たちに「シンプルな生き方」を教えてくれる本です。シンプルと言ってもやたらと物を捨てて節約するのではなく、良質で自分に本当にあった物を選ぶことが大切だと言っています。1日+1日+1日が「私たちの人生」になり丁寧な良質な毎日が上質な人生になるのです。そのためにどんな時間を過ごしたいか、何を大事にしていくのか「幸せの秘訣」を教えてくれます。
 又、人生の悩みの最たるものは、人間関係だと言っています。本当は断りたいのに相手の気持ちを考えると『No』とは言えずに小さく『Yes』と言って後悔する事。それが大きなストレスになってしまいます。その上手な断り方も教えてくれます。
 私はこの本を読んで本当に自分の大切な時間を無駄にしていることを改めて感じ、本当の贅沢とは高価の物をたくさん持つことでもなく、お金をたくさん使う事でもなく自分が満足する心地良い生活なのだと言うことがわかりました。この本は難しい哲学の本ではなく、日常の私たちの生活を見直し、本当に心地良い日々を過ごすことを教えてくれていると思います。
 内容は短編でいくつかに分かれていてとても読みやすく、各章に先人の言葉が書き添えられていてそれを読むのも楽しかったです。何度も読み返したい、そばに置いておきたい一冊です。

図書館員Hの本棚

あんみんガッパのパジャマやさん
柏葉幸子/作 そがまい/絵
小学館
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 商店街には不思議なパジャマやさんがあるそうです。
 みんな知っているようで、知らない、大きなカッパがあくびをしている形をしたお店の入口。きみがわるい。安眠どころか・・・。カッパはなんでこんなことをするのかしら。実はずっと眠れなくて悔しいから悪夢を見せているんだ!
 みんなもちゃんとお風呂に入ってきれいなパジャマを着た?じゃないと、あんみんできないもんね!

図書館員Wの本棚

親子で育てることば力と思考力
今井むつみ/著
筑摩書房
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 自分で考え、学ぶ力をつけてほしい。親なら子どもに誰でも持つ感情ではないでしょうか。この本は、幼少期から小学校中学年くらいの子どもを育てる親向けに、子どものことばの力をどう育てていけばいいのかを伝えています。
 ことばは生きた知識です。思考力は知識を使って推論し問題を解決する力なので、ことばの力を自分で育て磨く力を身につけることで、学ぶ力につながっていくという仕組みです。どうすればことばの力が育つのか、幼児期の子どもに対するコミュニケーションの方法が具体的に提示されています。また、小学校中学年になるとどうして授業が難しくなるのか、それは授業の内容が抽象的なものになっていき、語彙と思考力が必要になってくるからと説明しています。後半では、ことば力と読み聞かせの関係が示されています。自分の子どもは9歳なのですが、正直もう少し早くこの本に出会いたかったです。

図書館員Sの本棚

図書館の神様
瀬尾まいこ/著
マガジンハウス
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このような時だからこそ本書を読んで文学とひとの力を感じてみよう
 小中高とバレーボールひとすじで過ごしてきた清。あることをきっかけに、バレーボールをやめることになるが、部活の指導という違う形でバレーボールに関わることができればと高校の講師となる。
 しかし、希望とは違った文芸部の顧問になってしまう。文学に全く興味のない清には、苦痛な時間であったが、唯一の部員である垣内君の文学に対する思い、そして垣内君にもある過去のできごとを知り、次第に文芸部顧問としてのやりがいを見出していく。交際相手の浅見や、弟の拓実の存在も閉ざされた清の心を少しずつ開いていく。
 ひとは、ひとによって心に傷を負うこともあるが、またその心の傷を癒してくれるのもひとだと気づかせてくれる作品です。本書の中で登場する文学作品も読んでみたくなります。垣内君の「文学は僕の五感を刺激しまくった」というスピーチも大いに感動します。

図書館員Iの本棚

体感訳万葉集-令和に読みたい名歌36-
上野誠/著
NHK出版
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 彼氏がいないことを嘆く女歌「来て見べき 人もあらなくに 我家なる 梅の初花 散りぬともよし」。体感訳を見ると、「見にやって来る男なんかいないんだもの 家にある梅の木  それも今年はじめて咲いた花なんだけど 散ってしまったってかまわないよ!」 何とも捨て鉢な彼女の気持。でもどこか可愛らしくて身近にいそうではありませんか。
 万葉集は今から千三百年程前、飛鳥時代、奈良時代の歌4516首を集めたものです。
 この時代東アジア情勢は厳しく、天候不順による飢饉、地震災害、そして天然痘などの大流行があり、人々は苦しみました。そんな中、世界最大級の仏像を作り、繊細な表情を持つ阿修羅像を作り祈ったのです。万葉集にはどんな時代にも負けない人間の強さ、明るさがつめ込まれています。体感訳という作者の気分まで訳した本書を開くと、「なーんだ、思っていることは今も昔も少しも変わっていないんだな…」ということに気づくのではないでしょうか。

図書館員Tの本棚

わたしとあそんで
マリー・ホール・エッツ/ぶんえ よだじゅんいち/やく
福音館書店
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 原っぱに遊びに行った女の子。
 次々に出会う虫や動物たちは近づくとすぐに逃げてしまいます。
 仕方なく石に腰かけじっとしていると…。
 「もりのなか」などの作品で知られるアメリカの作家マリー・ホール・エッツさんの絵本です。
 柔らかな優しいタッチで描かれた生きものと女の子の穏やかであたたかな世界は、作品の中のおひさまのように読む人の心をぽかぽかと温めてくれます。

図書館員Mの本棚

わすれられないおくりもの
スーザン・バーレイ/さく え 小川仁央/やく
評論社
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 冬の始め、年取ったアナグマが森の友人達に手紙を残して亡くなります。
 アナグマを敬愛していた動物達はとても悲しみます。雪が溶け春になると皆、互いに行き来し、アナグマに教わった思い出を語りあいます。アナグマはいなくなってしまったけど、知恵や思い出というわすれられないおくりものを各々残してくれたことに気づき、それがどんなに豊かで大切なものかを知ります。そして悲しみはいつか感謝の気持に変ってゆくのです。
 前半は死を静かに受け入れてゆくアナグマの様子を追い、後半は森の動物達がアナグマの死を受け入れていく様子を描いています。去っていく者と残された者、生と死という難しいテーマが優しく温かい柔らかい文と色彩で描かれた絵本。小三の教科書に載っている児童書ではあるが、年を取り独りよがりの態度になってしまいがちな終活世代、シニア世代の書架にぜひそっと置いておきたい一冊。